前回に引き続き、相対的知財力を、アップルとサムソンのスマートフォン特許訴訟を例に示してみたいと思います。
アップルは、特許権10件、商標権2件、トレードドレス2件が侵害されたとしてサムソンを訴えており、サムソンも特許権10件を訴えられたとして反訴しています。
Apple Inc. v. Samsung Electronics Co. Ltd. et al の訴訟記録
Samsung Electronics Co. Ltd. et al v. Apple Inc. の訴訟記録
各社の強み特許、弱み特許というのは、全て訴訟になるわけではないので、実際にはこの数倍の件数の強み特許、弱み特許が存在しているはずです。本日は、相対的知財力を理解するためのということで、両社が互いに10件の強み特許を有しており、なおかつこれらの特許で自社の弱みを解消しよう(ライセンスを得よう)としていると仮定します。
特許権に限って言えば、知財力は10件対10件で互角と言えそうです。
それでは、相対的知財力はどうでしょうか。
Millennial Media社が、自社の広告表示数を元に発表した調査結果によると、米国のスマートフォンのメーカー別シェアは、1位アップル23.09%、2位サムソン16.48%となっています。
Millennial Media Releases Q3 Mobile Mix Report
上記の市場シェアを事業規模と仮定すると、相対的知財力はアップル10に対してサムソン14.4となり、クロスライセンスをするとしたら、若干サムソンに分があるという見方ができます。
少し前ならば、アップルの市場シェアは圧倒的に大きかったので、サムソンの相対的知財力はさらに大きかったでしょう。もっと早い時期に仕掛けていれば、サムソンは有利にライセンス交渉を進めることができたのかもしれません。
ここで重要なのは、知財力も相対的知財力も、時々刻々と変化していくということです。事業化のタイミング、事業のボリュームの先読みをしっかり行いながら、権利形成、ライセンス交渉を進めることが重要です。
仮に、シェア0.56%の京セラがアップルに対して強力な特許権を保有しているとしたら、非常に有利なライセンス条件を引き出すことが可能かもしれません。
おそらく、サムソン側の知財担当は上記のように考えながら、交渉戦術として提訴したように思えます。事業規模が大きくなりすぎないうちに、クロスライセンスを結べるのが彼らの最上の目標でしょう。
他方のアップルは、「守りの特許」を使って、本気でサムソンのギャラクシーを市場から排除しようとしているように見えます。こうなると、相対的知財力の考え方ではなく、最後の1件まで侵害性と有効性とが争われる可能性があります。
今後の行方に注目したいと思います。
ともかく、こうやってガチで争えるのは、双方がきちんと権利形成していたからに他なりません。
まずは「ゼロから1へ」です。