教育による模倣被害予防

昨日も東京大学TMIにお邪魔して、「第三者のモノマネへの対応」として、製品デザインを模倣された場合に、事業上どのようなリスクが生じ、如何なる措置を取り得るかを学習しました。

上記に対して、並の特許屋でしたら、意匠権侵害、あるいは不正競争防止法違反による差止請求や損害賠償という対応策はすぐ出てくると思いますが、経営的視点に立つと、予見性の低い訴訟を利用するのは必ずしも上策とは言えません。最も高品質(?)の模倣者を第一の子分にして、他の模倣者を取り締まらせるといった、実際にHONDAさんが中国で行った、「戦わない戦略」もあるのです。

学生さんの中からは、模倣者に製造委託して、市場拡大したときの設備投資リスクと機会損失を低減させるとか、模倣者の下請けデザイン業者に睨みをきかせ、そういった仕事は受けないようにする、といった拍手したくなるような対応策も出てきました。

ここで、ゲストスピーカである知的財産教育協会事業部長の近藤さんから、Yahoo!Japanで行っていた「ウェブ検定」のお話がありました。ウェブ検定とは、ウェブサイト利用上で知財権侵害となる事例を検定形式で学習させるコンテンツでしたが、当時、オークションで大量に出品されていた、ブランド品の模倣品を減らす狙いがあったそうです。
また、ルイ・ヴィトン・ジャパン(株)では、学校に講師派遣して、商標権を中心とする知財権教育を行い、本物と偽物との比較も体験学習させているそうです。これも、「賢い消費者」に模倣品を買わせない、予防的対策ですね。

このような、教育を模倣品予防に繋げ、事業を守るという戦略も相当な効果を上げていることを知り、事業の形態や権利の形態によって、とり得る戦略も千差万別であることを改めて認識したのでした。

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